グランドキャニオンのサウスリムを歩いていると、雄大な自然の中にひときわ存在感のある大きな木造建築が現れます。
その建物がEl Tovar Hotel(エル・トバー・ホテル)です。
グランドキャニオンを代表する歴史的なホテルで、開業したのはなんと1905年。
今回はEl Tovar Hotelに立ち寄り、重厚感のある館内やダイニングルームなどを見学。さらにホテルのすぐそばからグランドキャニオンの景色も楽しんできました。
外から眺めるだけでも雰囲気がありますが、実際に中へ入ってみると、現代的なホテルとはまったく異なる世界が広がっていました。
1905年開業!グランドキャニオンを代表する歴史的ホテル
El Tovar Hotelはグランドキャニオン国立公園のGrand Canyon Villageにあります。
米国国立公園局によると、ホテルを設計したのはシカゴの建築家Charles Whittlesey。

スイスのシャレーとノルウェーのヴィラを組み合わせたような建物として設計され、地元の石灰岩やオレゴンパインなどが使われました。
開業当時はFred Harvey CompanyがSanta Fe Railwayと連携して運営し、「ミシシッピ川以西で最も優雅なホテルの一つ」とみなされていたそうです。
現在も宿泊施設として営業を続けており、グランドキャニオン国立公園内で営業するホテルとしては最も古い建物です。
外観からすでに100年以上の歴史を感じる
実際に建物の前までやって来ると、まず目を引くのが「EL TOVAR」と書かれた木製の看板です。

青空の下に建つホテルは、周囲の自然に溶け込むような濃い茶色。
丸太を思わせる外壁や木製のバルコニー、屋根など、一般的なリゾートホテルとはかなり違った姿をしています。
写真で全体を見るとかなり大きな建物なのですが、華美な高層ホテルではないため、グランドキャニオンの風景の中に自然に馴染んでいるのが印象的でした。
国立公園局の資料では、ホテルはグランドキャニオンのサウスリムの縁からわずか約20フィート、約6mという場所に建てられています。
「グランドキャニオンに近いホテル」というより、本当にグランドキャニオンの縁に建っているホテルなのです。
中へ入ると一気に100年前の世界へ
建物の中に入ると雰囲気がガラッと変わりました。
館内はかなり暗め。
黒に近い濃い色の木材がふんだんに使われ、太い柱や梁が目に入ります。

そこに革張りのソファやテーブル、絵画、暖炉などが配置されていて、ホテルというより歴史的な山荘へ入ったような感覚です。
特に印象に残ったのがロビー周辺。
太い丸太を生かした柱が並び、その上には吹き抜けがあります。

見上げると2階部分を囲む木製の手すりまで凝ったデザイン。
床にはネイティブアメリカンを思わせる幾何学模様のカーペットが敷かれています。
100年以上前に建てられたホテルという歴史を知らなくても、「普通のホテルではない」とすぐに分かる空間でした。
ロビーのソファに座って過ごすのも贅沢
ロビーにはソファや一人掛けの椅子がいくつも置かれていました。
革張りのソファもピカピカの新品ではなく、使い込まれた風合いが建物によく似合っています。

壁にはグランドキャニオンを描いた絵画。
その横にはランプが灯っています。
新しいホテルなら古くなった家具をどんどん交換していくところですが、El Tovarでは建物全体の歴史そのものが魅力になっているように感じました。
ここは急いで通り過ぎるより、少し腰を下ろして空間を眺めていたくなります。
2階へ上がってみる
階段を上がって2階部分へ。
こちらから見る吹き抜けも素敵でした。

中央が大きく開いた空間を木製の手すりがぐるりと囲み、その周囲にも椅子やテーブルが置かれています。
1階の重厚でやや暗い雰囲気とは少し変わり、上階は窓から自然光が入って明るい印象です。
今回の写真を見返してみても、1階から吹き抜けを見上げた景色と、2階から見下ろす空間ではまったく表情が違います。
館内そのものをじっくり見て歩くのも、El Tovar Hotelの楽しみ方の一つだと思います。
客室へ続く廊下も歴史を感じる
客室フロアへ進むと、長い廊下が続いていました。
こちらはロビーとは異なり、クリーム色の壁に濃い色のドアという比較的シンプルな造り。

それでも床には館内で共通する柄のカーペットが敷かれていて、歴史あるホテルらしい雰囲気が続いています。
El Tovarは歴史的建築物であることから、客室はすべて同じ造りではありません。国立公園局も「同じ部屋は2つとしてない」ことを、このホテルならではの特徴として紹介しています。
客室は意外にもシンプル
そしてこちらが客室。
ロビーの重厚な雰囲気から想像すると、客室も全面的に木に囲まれているのかなと思ってしまいますが、実際にはかなり落ち着いた造りです。

ベッドやテレビ、デスクなどが配置され、奥にはさらに空間が続いていました。
歴史的な建物でありながら、客室では現代のホテルとして利用できる設備が取り入れられています。
一方で、壁や扉などを見ていると建物が歩んできた年月も感じられます。
ピカピカの最新ホテルとはまったく違いますが、ここではむしろ、その古さも含めて泊まること自体が体験になるホテルなのだと思います。
El Tovar Dining Roomも見学
館内には「DINING ROOM」の表示があり、レストランもあります。
中を覗いてみると、こちらも木を基調とした空間。

天井には木の梁が見え、照明もクラシカルです。
白いテーブルクロスが並ぶレストラン部分はロビーより少し明るく、重厚さの中にも上品さを感じました。
El Tovarには現在もダイニングルームやラウンジが設けられています。
さらに館内には、レストランで使われてきた食器や調理器具などを紹介する展示も。

単に食事をする場所というだけではなく、ホテルの長い歴史を伝える展示になっているのが面白いところです。
お土産を購入できるショップも
館内にはショップもありました。
Tシャツや帽子、シャツ、ベストなどがずらり。

「GRAND CANYON」「EL TOVAR」と入った商品もあり、El Tovarを訪れた記念のお土産を探すこともできます。
グランドキャニオンという場所柄もあって、カウボーイハットのような商品が並んでいるのもアメリカらしいですね。
ポーチにはロッキングチェア
外へ出ると、屋根のあるポーチには木製のロッキングチェアが並んでいました。

これがまた建物の雰囲気にぴったり。
ホテルの歴史を知らずにこの写真だけ見ても、アメリカ西部の古いロッジのように見えます。
椅子に腰掛けてのんびり過ごしたくなる場所でした。
そしてホテルのすぐ前にはグランドキャニオン!
El Tovar最大の魅力を実感したのは、やはり外へ出たときです。
ホテルのすぐそばまで歩くと……
目の前がグランドキャニオン!

ホテルとグランドキャニオンの間に街や大きな道路があるわけではありません。
建物を出て少し歩くだけで、サウスリムから雄大な景色を眺められます。
実際に写真を撮ってみると、アメリカ国旗の向こうにグランドキャニオンの岩壁が延々と続いていました。
さらにホテルの2階のてラスからはグランドキャニオンが一望できます。

これはEl Tovarならではの景色でしょう。
窓越しに眺めるグランドキャニオンも素晴らしい
今回特に印象的だったのが、ホテルの建物越しに見るグランドキャニオンです。
窓の向こうに岩壁が広がり、ポーチの椅子の向こうにもグランドキャニオン。
展望台へ行って「さあ絶景を見るぞ」と構えるのとは少し違います。

ホテルで過ごす日常の風景の中にグランドキャニオンがある。
これこそ、この場所にホテルが建っている最大の魅力なのかもしれません。
1905年にここを訪れた宿泊客も、100年以上後の私たちと同じように、この場所からグランドキャニオンを眺めていたのでしょう。
そう考えると、景色の見え方まで少し変わってきます。
鉄道でやって来た旅行者を迎えたホテル
そして、前回訪れたGrand Canyon Depotと合わせて見ると、El Tovar Hotelがさらに面白くなります。
グランドキャニオンへ鉄道が到達したのは1901年。
その後1905年にEl Tovar Hotelが開業しました。
当時、鉄道でグランドキャニオンへやって来た旅行者たちを迎える高級ホテルとして重要な役割を担っていたわけです。国立公園局も、Santa Fe RailwayとFred Harvey Companyが連携して運営していた歴史を紹介しています。
駅とホテル、そして目の前のグランドキャニオン。
現在それぞれを歩いてみても距離が近く、当時の旅行の姿を想像しやすい場所です。
歴史的建築と絶景を同時に楽しめる場所
今回El Tovar Hotelを訪れて印象に残ったのは、「グランドキャニオンのそばにあるホテル」というだけではなかったことです。
1905年から続く建物そのものに価値があり、館内を歩けば太い木の柱や梁、吹き抜け、家具、カーペット、絵画など随所に歴史を感じます。
そして外へ出れば、目の前にはグランドキャニオン。
1987年にはNational Historic Landmarkにも指定されました。
グランドキャニオンを訪れると、どうしても絶景を追いかけることに夢中になってしまいます。
でも、少し時間を取ってEl Tovar Hotelの中へ入ってみると、この場所に人々がどのようにやって来て、どのようにグランドキャニオン観光が発展してきたのかという、また違った魅力を感じることができました。
絶景だけではなく、100年以上前から旅行者を迎え続けてきた建物も見る。
グランドキャニオン観光でぜひ立ち寄ってほしい場所の一つです。
というわけで、よい旅を!
●グランドキャニオンのレポートはこちら
























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