世界的な観光地として知られるアメリカ・アリゾナ州のグランドキャニオン。
雄大な渓谷の景色が最大の目的ではありますが、サウスリムのGrand Canyon Villageを歩いていると、鉄道好きとしては素通りできない場所がありました。
それがGrand Canyon Railway Depot(グランドキャニオン駅)です。
現在もWilliams(ウィリアムズ)とグランドキャニオンを結ぶ「Grand Canyon Railway」の列車が発着している現役の駅ですが、驚くのはその駅舎。

なんと100年以上前に建てられた歴史的建造物が、今も駅として使われています。米国国立公園局によると、現在の駅舎は1909~1910年に建設され、National Historic Landmarkにも指定されています。
グランドキャニオンの風景に溶け込むログ造りの駅舎
駅に着いてまず目を引いたのが、正面に大きく「GRAND CANYON」と掲げられた駅舎です。

丸太を組み合わせたような外観に、緑色の窓枠。目の前には線路と木製のプラットホームがあり、周囲の木々も含めて非常に雰囲気があります。
近代的な観光地の駅というより、アメリカ西部を旅していた時代へタイムスリップしたような風景です。
この駅舎は建築家Francis W. Wilsonの設計によって1909~1910年に建てられました。
NPSによると、アメリカ国内で建設されたログ造りの駅舎は14棟。そのうち現存するのは3棟で、丸太を主要な構造材として使用し、なおかつ現役の鉄道駅として使われているのはグランドキャニオン駅だけとされています。
そう聞くと、目の前の建物を見る目も変わってきます。
グランドキャニオン観光と鉄道には100年以上の歴史が
現地に設置されていた「Grand Canyon Depot」の解説板も見てみました。
グランドキャニオンに最初の旅客列車が到着したのは1901年。

それ以前、旅行者はFlagstaffから約90マイルを駅馬車で移動していたそうですが、鉄道の開通によってグランドキャニオンへのアクセスが大きく変わりました。列車の到着をきっかけに、静かだったサウスリムにはホテルなどが整備され、現在のGrand Canyon Villageへと発展していきます。
現在の駅舎が完成したのは1910年。
現地の解説板にも、
「In 1901」
「This log depot, finished in 1910」
と、その歴史が紹介されていました。
つまり、この駅は単に観光列車が発着する場所ではなく、グランドキャニオン観光の発展そのものを見続けてきた駅でもあるのです。
目の前にGrand Canyon Railwayが!
そして訪れた際には、ちょうどホームにGrand Canyon Railwayの列車が停車していました。
これが実に格好いい!
銀色の車体にゴールドと赤のラインが入り、側面には大きく「GRAND CANYON」の文字。
写真に写っている車両には「CHIEF」の文字も確認できます。
さらに編成の中には、屋根部分まで大きな窓になったドームタイプの車両も見えました。

歴史ある木造駅舎と長い列車が一緒に並ぶ光景は、まさにアメリカの鉄道旅行を象徴するような風景です。
Grand Canyon Railwayでは現在、WilliamsからGrand Canyon National Parkまで約65マイルを走り、サウスリムのGrand Canyon Depotまで乗客を運んでいます。

一度は姿を消したグランドキャニオンへの旅客列車
実はこの鉄道、100年以上ずっと旅客列車が走り続けていたわけではありません。
自動車が普及すると鉄道利用者は減少し、1968年7月にグランドキャニオンへの定期旅客列車が終了。翌1969年にはGrand Canyon Depotも閉鎖されました。

ところが、それで歴史が終わったわけではありません。
1989年に鉄道復活へ向けた動きが実を結び、Williams側で旅客営業が復活。その後、1990年7月にはGrand Canyon Depotも再び列車を迎えるようになりました。
現地の解説板にも1968年の旅客営業終了と、1989年の旅客サービス復活について紹介されています。
昔の写真と現在目の前に停車している列車を見比べると、廃止された鉄道が再び観光客を運ぶようになったという歴史が、より身近に感じられました。
「National Historic Landmark」のプレートも発見
駅舎には、
GRAND CANYON RAILWAY DEPOT
NATIONAL HISTORIC LANDMARK
と刻まれたプレートがあります。
写真にも「1987」と記されています。
NPSによると、Grand Canyon DepotがNational Historic Landmarkに指定されたのは1987年5月28日。
グランドキャニオンといえば、どうしても大自然に目が向きますが、Grand Canyon Villageにはこうした歴史的建造物も残されています。

しかも展示用に保存されているだけではなく、100年以上前の駅舎に現在も列車がやって来る。
ここが個人的にはかなり面白いポイントでした。
駅からグランドキャニオンは驚くほど近い
さらに面白いのが駅の場所です。
Grand Canyon Depotはグランドキャニオンのサウスリムからわずか約200ヤード、約180mの場所にあります。
列車を降りて少し歩けば、あのグランドキャニオンの大絶景が待っているわけです。
1900年代初頭の旅行者も、この駅に降り立ち、駅からグランドキャニオンへ向かったのでしょう。

現在は車やバスで訪れる人も多いグランドキャニオンですが、100年以上前から鉄道で観光客がやって来ていたと考えると、この場所の見え方が少し変わってきます。
グランドキャニオン観光でぜひ立ち寄りたい歴史スポット
今回は列車に乗車したわけではなく、グランドキャニオン観光の途中で駅に立ち寄っただけでした。
それでも、100年以上の歴史を持つ駅舎を間近で見て、さらに実際にGrand Canyon Railwayの列車が停車している姿まで見ることができ、思っていた以上に見応えがありました。
何より印象に残ったのは、駅そのものが歴史的建造物でありながら、現在も「現役」であること。
木造の駅舎、年季を感じるホーム、そこに停車する銀色の長い列車。

グランドキャニオンの壮大な景色とはまた違った意味で、「アメリカを旅しているな」と感じられる場所でした。
鉄道好きの方はもちろんですが、鉄道にそれほど興味がない方でも、Grand Canyon Villageを散策するなら少し足を延ばしてみる価値があると思います。
次に訪れる機会があれば、今度はWilliamsからGrand Canyon Railwayに乗り、この歴史ある駅に列車で到着する旅も体験してみたくなりました。
というわけで、良い旅を!





















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